あとがき
約一年三ヶ月ほどの長期連載にお付き合いくださりありがとうございます! 「記憶喪失中の人格は存在していいのか?」という問題提起からは若干ずれてしまった部分もあるかなと反省しつつですが、個人的には納得いく最終回になりました。どうすれば記憶喪失中…
小説 小説─神薙羅滅先生作品─《白紙の私に無題の道を》
《白紙の私に無題の道を 最終回 額縁無き絵画の中心で》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
郊外にある庭付きの豪邸で、もはや私にさえ誰かわからない、どれかの菊花が主催したパーティーを二階の自室から眺めている。秋の夕暮れ時、バーベキューにはたくさんの人が参加していて。私はその集まりからこうして距離をとっている。菊花は宣言通り、際限な…
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《白紙の私に無題の道を 第32話 アガペー・エピデミック》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
あの子が働いていたメイド喫茶。あの子が働き始めたのを見守っていた時と全く同じ席で翠鹿のライブを、日美香と一緒に見ていた。1「……なんか、変な雰囲気な気がするんだけど……私の気のせいだよね?」店内を包み込む異様な空気。それを日美香は、いつもの…
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《白紙の私に無題の道を 第31話 大輪萌芽》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
「……お前、最近変じゃないか?」仕事を終えて、日美香が作ってくれた晩ご飯を食べていると、蓮が文脈なく。だけど、いつになく真剣に、そう語りかけてきた。「おかしいって、私がですか? おかしいところなんてないですよっ!」「……日美香、どう思う?」…
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《白紙の私に無題の道を 第30話 ロールプレイ・アイデンティティ》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
仕事をするというのは、想像していたよりも、ずっと悪くなかった。働いている時間が週に三日と少ないから、生活を成り立たせるほどお金を稼いでいるわけじゃない。それでも、働き始める前よりは、ちょっとだけ、まともな人間になれたと錯覚できた。あと単純に…
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《白紙の私に無題の道を 第29話 新世界トリップ》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
菊花の実家へのプチ旅行を終えた私たちは、日常へと帰っていた。私たちに起きた一大事なんてまるでなかったように、世界は流れている。電車の中にいる人。大学の校舎を流れていく人並み。私が気付いていないだけで、もしかしたらこの人たちにも、隠れた一大事…
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《白紙の私に無題の道を 第28話 盲目と温もりと》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
今日は菊花の実家に宿泊する予定だったけど、それが私の思いつきでできなくなってしまったから、私たち三人……眠っている菊花を入れたら四人になるのかもしれないけど……は、駅前のビジネスホテルにいた。「本当に……お前といると退屈しないよ」「もしかし…
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《白紙の私に無題の道を 第27話 帰省的卒業式》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
明日の午後一時に、薫子さんに会いに行くことになっている。いまが夜の十時だから、あと十二時間もしたら、顔を合わせている。そう考えただけで、心臓が裏返りそうになる。どうしてこんなことになったんだろう。そんな疑問が頭に浮かぶけど……思い返してみた…
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《白紙の私に無題の道を 第26話 偽らざる者》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
菊花に喰われるまでの私の世界の全てだった病室。以前と病室こそ違うけど、同じ病院だから、窓から覗く景色以外は全て同じ。あんなに私の自由を縛り付けているように思えて忌まわしかったこの空間が、いまは世界と私を繋いでくれているように感じる。入院して…
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《白紙の私に無題の道を 第25話 独り言ドッヂボール》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
死んだら意識は消えると思っていたんだけど、実際はそうでもないらしかった。あるいは、私は死ねずに、植物状態に陥っているのかもしれない。どうせ身動きが取れないなら、意識なんてない方がよかったのに。 私が死にたくなる気持ちはわかるよ。こんなしょ…
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《白紙の私に無題の道を 第24話 露悪的リバイブ》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
生きるってなんだろう。少し前までは、生きていれば生きていると思っていた。呼吸していれば、それだけで生きていると感じられた。だけど、いまはどうだろう。私が遭ったわけじゃない事故の後遺症で、病室にいるしかなかった頃よりもずっとずっと、私は死んで…
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《白紙の私に無題の道を 第23話 オープンワールド・シンドローム》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
「……全然、授業ついていけないんですけど」今日初めて訪れた大学の食堂でお昼ご飯を食べながら、二人に弱音をこぼす。結局、菊花は目覚めることなく眠りについたまま休日が終わり、私が大学に通うことになった。それ自体は嬉しいこと。三人で一緒に日常を送…
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