《白紙の私に無題の道を 第22話 よくばりサクリファイス》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
蓮と日美香、そして菊花が一緒に住んでいる部屋のリビングを三人で囲む。私がいまこうしていることは、間違いない。そのはずなのに、どこか現実感がない。私の世界は狭い病室の中だけ。記憶がないから、本当にそこしか知らない。だから、外の世界に自分がい…
小説 小説─神薙羅滅先生作品─《白紙の私に無題の道を》
《白紙の私に無題の道を 第21話 Luck of Life》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
菊花が一人で物置で寝ると宣言してから、一夜が明けた。日美香と一緒に朝ごはんを作りながら、菊花が起きてくるのを待つ。今日は大学が休みだし、他の予定もない。それでも、普段はもう三人が揃っている時間だから、起こしに行くか迷う。ただ、昨日あんな思い…
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《白紙の私に無題の道を 第20話 三等分にできない心たち》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
本当にこれが私の望んだことだったのか、わからなくなることがある。日美香を差し置いて、あの子を喰らった菊花といちゃついていることが。「なんか最近の二人、距離近くない?」リビングにあるソファーに座った状態で課題をこなしている日美香が、ぼそっとそ…
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《白紙の私に無題の道を 第19話 セカンド・アドバンテージ》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
大学は四年ある。それを長いとみるか、短いとみるかは人それぞれだと思うけど、二年目や三年から就職活動を始めるのは、いくらなんでも……って思うのは、人類共通なんじゃないかと思う。私たちが通っているゼミや、同じ年代が集まる授業では、就職先をどうす…
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《白紙の私に無題の道を 第18話 両刃感性》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
お昼休み、通い慣れた大学の学内を、私が菊花が乗る車椅子を押し、日美香と一緒に食堂へ向かう。それは以前と全く同じ、いつもの日常。だけど、菊花が事故に遭う前と後では、何もかもが違う。あの時は、日美香と菊花が付き合っていて、私は何も行動できない自…
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《白紙の私に無題の道を 第17話 日常への不完全な帰還》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
あの子を食い散らかした菊花の右手を繋いで歩く。これまでは病院の中でこうしていたけど、今日は違う。リハビリもかねて、病院の目の前にある公園を、日美香と三人で散歩している。菊花が事故に遭ってから初めての外出。あの子と違って菊花はリハビリに熱心だ…
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《白紙の私に無題の道を 第16話 君の全てを全肯定!》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
記憶を取り戻してからの菊花は、リハビリに熱心だった。自分の頑張りが菊花に奪われるという恐怖がなくなったんだから、怪我から回復することは菊花にとってプラスでしかない。リハビリは病院に任せきりにすることもあったけど、大学の出席日数に余裕がある私…
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《白紙の私に無題の道を 第15話 ココロ・リビルド》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
日美香から三人一緒に付き合うことを提案され、それを受け入れる。だけど、受け入れたからって、そう簡単に心に馴染む結論じゃない。なにせ常識では、三人一緒で付き合うことは良くないこととされていて、それを信じて生きてきた。常識や感情という意味でも受…
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《白紙の私に無題の道を 第14話 セルフハッキング》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
三人で付き合う。その提案をしてから一晩が経った。日美香さんと蓮さんからの連絡はまだない。昨日、日美香さんを見送ってから、ずっと心臓が早い。事故の怪我が治りきっていない身体には、この程度のことでさえ堪える。 一人だと、余計なことばかり考えて…
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《白紙の私に無題の道を 第13話 忘我的リトライ》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
「蓮がこんなことするなんて、信じられない。私がついてればこんなことにならなかったのに、本当にごめん」ベッドの側で申し訳なさそうに平謝りしている日美香さんを見て、心が急速に冷静さを取り戻していく。蓮さんに突然押し倒されて、怒られて。当たり前だ…
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《白紙の私に無題の道を 第12話 単純な解法》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
やってしまった……家に帰ってから、ずっとその後悔に苛まれている。ベッドに倒れ込んだまま動けないまま、何時間経っただろう。 記憶を失った菊花に告白されて、思わず押し倒してしまった。そういう意味で押し倒すならまだしも、なにもかもよくわからなく…
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《白紙の私に無題の道を 第11話 全方位好意的変換装置》作:神薙羅滅(Kannagi Rametsu)
病院からの帰り道を、一人で歩く。日が暮れ始めていて、一日が終わることを感じさせる。あのまま菊花の病室にいれば、日美香と会えたと思う。だけど、そうすることが怖くて、逃げるように退散した。記憶を失った菊花は、菊花ではない誰かだった。あんな姿を見…
小説─神薙羅滅先生作品─《白紙の私に無題の道を》